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017: 五十嵐嘉行 ①

2015年6月、酒田への旅に合わせ鶴岡在住、五十嵐嘉行工人の工房を訪ねた。その折に注文したこけしが先日届けられたので、少し時間が経ってしまったが今回はその報告も兼ねて五十嵐嘉行工人についてまとめてみたい。(以下、敬称略)

五十嵐嘉行工人
五十嵐嘉行工人(2015年6月14日撮影)

1. 歩み

津軽系こけし工人・五十嵐嘉行は昭和2年(1927年)6月1日、鶴岡市本町2丁目の石材業・嘉吉の長男として生まれた。昭和26年(1951年)9月、24歳で鶴岡市内の木地師・伊藤佐太郎に師事し木地修行を行い、茶道具等の木地玩具を制作する。

「新鶴岡こけし」

転機となったのは、昭和59年(1984年)。実弟・嘉道と「新鶴岡こけし」を考案。おそらく上の写真がそれ。同こけしを発表すると山形テレビ等に取り上げられたが、山形こけし会から伝統こけしでなくては駄目だと勧告を受けたという。それを受け弟子入りさせてくれるこけし工人を探したが、当時は受け入れてくれる工人はなく苦労したようである。その中で来てみろと声をかけてくれたのが青森県大鰐温泉の間宮正男であった。余談ではあるが、弟子入りできるところがなかなか見つからない工人は身延山(法華経)に願をかけた。受け入れてくれた間宮正男の元へ行ってみると同人宅にも同じ仏壇があったという話である。

『伝統こけし工人手帳』(平成6年第9刷)によると、昭和60年(1985年)11月から間宮正男の指導を受けた。通いで描彩のみを修業した。昭和62年(1987年)9月7日、間宮正男より師弟許可を受け、晴れて津軽系伝統こけしの制作を行うようになった。時に工人60歳。自宅には師弟許可証が大事に飾られている。

五十嵐嘉行工人の工房

現在は鶴岡市日出町の自宅兼工房にて師匠の間宮正男型と間宮明太郎型の他、遺族の許可のもと鶴岡で活動した竹野銀次郎型も制作している。なお本人に確認したところ、上記「新鶴岡こけし」とkokeshi wiki に記載されている「羽黒山等で売られている創作の「山伏こけし」」は現在は製作していないそうである。

2. こけし鑑賞

五十嵐嘉行1-1

始めに手にした嘉行工人作は前列のえじこ2寸9分であった。山頂の天文台を思わせるえじこの胴に小振りなおかっぱ頭がちょこんとのっており、全体の均整もとれて可愛らしい。胴模様は赤、緑、紫の轆轤線のみで構成されており、太い紫の波線がアクセントとなっている。大らかな表情はどこか工人の面影を映しているような気がする。

後列の3本は工人宅で直接注文してきたもの。左より、間宮明太郎型4寸、同6寸、本人型5寸1分。工人宅へ伺うとレパートリーをまとめた小冊子を見せてもらえる。そこに載っている写真にはそれぞれ番号が振られており、例えば「A-②-1の左から2本目のこけしを4寸で1本」という具合にほしいこけしを指定して注文するシステムになっている。

左の4寸は『こけし時代』11号に写真掲載されている木村弦三コレクションでも確認できる小寸の型。胴模様は究極的に簡素。胴の上下に鉋溝が2本ずつ入れられ、各溝には赤い轆轤線が引かれる。ヘアバンドをしているような頭髪の様式、一筆目の素朴な表情など稚拙の味濃厚なこけしである。なお『こけし時代』掲載品は下2本の轆轤線が紫色(?)になっている。

真中の6寸は同じく間宮明太郎型であるが、4寸と対照的にこちらは洗練された意匠。全体が黒い轆轤線と灰色の花模様によって統一されておりモノトーンの配色がモダンな佇まいを醸す。詳しくは別項で紹介するが同時に写しを依頼した間宮正男の達磨こけしに通じる部分が多く、そちらと比較する目的も兼ねてこの型を注文した次第である。送られてきたこけしを手に取ると表情可憐でじわじわとした味わいがあり、注文する際に見た写真よりもずっと可愛らしく感じられるのは思わぬ収穫であった。

右の5寸1分は本人型。Instagram における工人の人気は、このこけしと同じ木地形態に同じおかっぱ頭、胴に三つ葉模様をあしらった本人型に端を発しているように思われる。実際自分もこの工人に興味をもったのはその型からであったと自認しているのだが、他人と同じこけしを持っていてもと思い留まり、轆轤線のみによるこのこけしを選んだ。引き締まった表情はなんとも凛々しい。緑と赤の轆轤線によるこの簡素な胴模様は間宮明太郎系列の真骨頂といったところだろうか。木目の面白さも引き立っているように思う。

五十嵐嘉行1-3

さて工房にお邪魔した時、売り物となるこけしは一本もなかった。しかしせっかく来てくれたのだからと片隅に置かれていた達磨をひとつ選んで持たせてくれた。それがこの2寸8分の達磨。ずんぐりと重量感がありながらも木地形態は端正であり、胴に書かれた文字もなにやらすこぶる縁起が良い。そしてこの意思固い表情は愛嬌抜群で、達磨の収集をしていない自分も大いに気に入るところで折に触れて眺めている。工人のご好意にここで改めて感謝いたします。

(つづく)

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