018: 本間久雄 ⑤
「005: 本間久雄 ①」で紹介した本間久雄工人の「柏倉勝郎型」をここに改めて掲載する。

このこけしはおぼちゃ園が入手した初めての酒田こけし、初めての本間久雄作であった。先に結論付けたように、この「柏倉勝郎型」は久雄の酒田こけし製作史においてはブレーキングポイントとなった時期のものと考えられる。酒田こけしの継承にあたり試行錯誤を続けてきた中で、祖形となる柏倉勝郎作の写しに取り組み、その後の「本間久雄による酒田こけし」を確立するに至る流れの中で作られたこけしといえるのだ。

胴背面には「酒田 柏倉勝郎型 本間久雄」と署名がなされている。一本のみを所有しているだけでは分からなかったことであるが、実はこのように「柏倉勝郎型」と明記されている久雄作は少数派で、大部分は胴背面もしくは胴底に「酒田 本間久雄」とだけ署名される。しかしそれにしても柏倉勝郎作に肉迫した感のある「深澤勝郎写し」でさえ用いられていない「柏倉勝郎型」の銘がこの様式のこけしに特記されているのにはなかなか興味をそそられる。このこけしに「原」となるこけしは存在するのであろうか。
このこけしの特徴としては、①太い面描、②ムスッとした表情、③頭髪とくっつかない鬢、④鬢飾りの下部が一本線、⑤段のつかない緩やかな肩のライン、⑥細めで裾にかけて僅かに広がる木地形態、⑦丸みを帯びた花弁と葉、⑧葉の最下部が「ハ」の字型(これは勝郎作にもよく見られる)、⑨花弁は左右同数で計8枚、⑩菊花の下に小さな赤点がつかない、⑪胴の背面に署名、⑫胴底の通し鉋に小さな爪跡、等が挙げられる。特に⑤はそれまでの久雄作には見られないもので⑧とセットで考えると何か手本となるこけしがあっても良いような気もしてくる。「深澤勝郎写し」と同程度、或いはそれ以上の精度で忠実に写された復元作という可能性もやはり否定することはできないだろう。

「深澤勝郎写し」の項の繰り返しになるが、この「柏倉勝郎型」は「深澤勝郎写し」よりも前に製作されたと推測される。「深澤勝郎写し」は、面描の細さ、重ね菊の様式に久雄の独自性が認められ、かならずしも「原」に忠実な写しとはいえない。仮にそこが「柏倉勝郎型」と明記されていないひとつの理由だとしたら、ますます本項のこけしが忠実な写しであるという可能性は高まるようにも考えられはしないだろうか。
初掲載の折には「寝ぼけ眼か、あるいは少しムスッとしたような不機嫌顔で思春期の娘を思わせる表情である」と書いたが今改めてこの表情を見つめると、力強く、凛々しい。極太の鬢を伴う表情からは並々ならぬ意志の強さを感じさせられる。これはこの時期だけに見せた久雄の強気の表情である。久雄の続けてきた酒田こけしへの取り組みがようやく実を結ぼうとしていたのである。

最後に先日入手した柏倉勝郎作6寸2分と並べてみる。表情、情味とも本家に敵わないものの、あながち遠からず、ではないだろうか。
過去の本間久雄関連記事
「005: 本間久雄 ①」
「010: 本間久雄 ②」
「011: 本間久雄 ③」
「012: 本間久雄 ④」

このこけしはおぼちゃ園が入手した初めての酒田こけし、初めての本間久雄作であった。先に結論付けたように、この「柏倉勝郎型」は久雄の酒田こけし製作史においてはブレーキングポイントとなった時期のものと考えられる。酒田こけしの継承にあたり試行錯誤を続けてきた中で、祖形となる柏倉勝郎作の写しに取り組み、その後の「本間久雄による酒田こけし」を確立するに至る流れの中で作られたこけしといえるのだ。

胴背面には「酒田 柏倉勝郎型 本間久雄」と署名がなされている。一本のみを所有しているだけでは分からなかったことであるが、実はこのように「柏倉勝郎型」と明記されている久雄作は少数派で、大部分は胴背面もしくは胴底に「酒田 本間久雄」とだけ署名される。しかしそれにしても柏倉勝郎作に肉迫した感のある「深澤勝郎写し」でさえ用いられていない「柏倉勝郎型」の銘がこの様式のこけしに特記されているのにはなかなか興味をそそられる。このこけしに「原」となるこけしは存在するのであろうか。
このこけしの特徴としては、①太い面描、②ムスッとした表情、③頭髪とくっつかない鬢、④鬢飾りの下部が一本線、⑤段のつかない緩やかな肩のライン、⑥細めで裾にかけて僅かに広がる木地形態、⑦丸みを帯びた花弁と葉、⑧葉の最下部が「ハ」の字型(これは勝郎作にもよく見られる)、⑨花弁は左右同数で計8枚、⑩菊花の下に小さな赤点がつかない、⑪胴の背面に署名、⑫胴底の通し鉋に小さな爪跡、等が挙げられる。特に⑤はそれまでの久雄作には見られないもので⑧とセットで考えると何か手本となるこけしがあっても良いような気もしてくる。「深澤勝郎写し」と同程度、或いはそれ以上の精度で忠実に写された復元作という可能性もやはり否定することはできないだろう。

「深澤勝郎写し」の項の繰り返しになるが、この「柏倉勝郎型」は「深澤勝郎写し」よりも前に製作されたと推測される。「深澤勝郎写し」は、面描の細さ、重ね菊の様式に久雄の独自性が認められ、かならずしも「原」に忠実な写しとはいえない。仮にそこが「柏倉勝郎型」と明記されていないひとつの理由だとしたら、ますます本項のこけしが忠実な写しであるという可能性は高まるようにも考えられはしないだろうか。
初掲載の折には「寝ぼけ眼か、あるいは少しムスッとしたような不機嫌顔で思春期の娘を思わせる表情である」と書いたが今改めてこの表情を見つめると、力強く、凛々しい。極太の鬢を伴う表情からは並々ならぬ意志の強さを感じさせられる。これはこの時期だけに見せた久雄の強気の表情である。久雄の続けてきた酒田こけしへの取り組みがようやく実を結ぼうとしていたのである。

最後に先日入手した柏倉勝郎作6寸2分と並べてみる。表情、情味とも本家に敵わないものの、あながち遠からず、ではないだろうか。
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「005: 本間久雄 ①」
「010: 本間久雄 ②」
「011: 本間久雄 ③」
「012: 本間久雄 ④」
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